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江戸時代も半ばになると、本膳料理は、その複雑な様式のため徐々に衰退し、婚礼などの特別な儀式料理や、節供料理として、その姿をとどめるだけになっていきます。

  一方、今まで一般の会席料理(茶の湯における会席料理と区別する)が、作法にとらわれずに気楽にどうぞということで、本膳と会席料理の双方のいいところをとって生まれました。

 茶の湯の会席料理に「懐石」に字が当てられるようになったのは、この商売としての会席料理が登場して、茶人がその混同を嫌ったためといわれています。しかし現代では「懐石」が乱用されて、利休の精神を見直す意味で「茶会席」という言葉が使われるようになったのは、面白い現象です。

日本料理の調味料
  一般に料理は素材を食べやすく、柔らかく、適当な固さに戻して、これに味付けすることと考えられることが多いようです。そこでしばしば「割り」という言葉が用いられ、砂糖を何グラム、塩大匙何杯、酢小匙何杯といった形で、その割合が理想的であれば、旨い料理が食べられることになるはずです。

  つまり、いろいろの素材を加えれば濃厚になりますが、その場合でも、味の調和ということを考えなければ、本当に旨いものはできないわけです。

  この加算混合の料理に対して、素材の持ち味の中から、旨い成分を引き出す方法と、まずい成分を引き出す方法により、理想的な味を作っていく料理を減算混合の料理といいます。

  日本料理はまさに減算混合の料理なのです。

  「出汁を引く」という言葉が示しているのは、材料の中にある旨味成分を抽出することのよい例です。
「アクを引く」は、素材の中にある悪い成分だけを引き出して、よい成分だけを残して使う方法です。湯引きするなども、たとえばボラのように臭味のある魚を湯の中に通して、臭味成分だけを湯の中に引き出して残し、よい部分だけを使うという考え方に立ったものです。

  つまり、これは減算混合の料理というわけです。

  日本料理にはこのように、素材の欠陥を取り去ったものを加算しますので、味は淡泊になり、簡浄になっていくのです。

  料理の原点をなすものは、「土産土法」(どさんどほう)といって、その土地でとれた産物を、その土地の調理法で食べるということです。

  けれども、時代が進むにつれて、自分たちの生息する地域外の人間との接触が生じ、他の文化が入るようになると、食文化の体系にも影響をきたして、調理法に若干の変化が生じて新しい調理法が加算されることになります。

  が、結果としては技術的な面に限られて、調理される素材そのものには変化はみられず、その土地の産物、食習慣に従った調理法により調理された料理が生まれることになります。

  さらに交通の便がよくなり輸送力が拡充されるようになると、地方の料理というものが、素材と共に運ばれ、輸入されて、その土地の新しい料理として加算されていきます。  異文化との接触で、急速に吸収されて土産土法に加えられた結果、今までにないまったく新しい料理が生まれてきます。

  その例は、長崎の卓袱(しっぽく)料理をはじめ、黄檗流の普茶料理などに見られるとおりです。

  土産土法の料理は、いわば原住民の料理でありますが、これを洗練された料理に仕立てたものが郷土料理であるということがいえます。日本料理は現在、地方にあるいわゆる土産土法の料理を基盤とした郷土料理と、中央にある都市型の花柳界を主な舞台として発達した会席料理に大別することができると思います。

  けれども、最近では地方の特色をもっていた郷土料理が、都会的なセンスの料理の影響を受けて、郷土料理がもっていた素朴さや味覚の純粋さを失い、本来の持ち味を失っていく傾向にあることは残念なことです。

  現代においては、食材それ自体が昔のものとは変わり、調理法も保存法も全て変化している上に、食べる側の嗜好も時代とともに変化しているわけです。単に味覚の上での調理にとどまらず、健康上の問題から塩分を控え、当分も少なめに、などの配慮があるために、その昔の郷土料理の味それ自体を出汁得なくなっていることも事実なのです。

 

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